儲かるシステムに安住してきたアメリカ金融界

アメリカの金融業にはあまり闇の世界がない。
乱暴者で違法ドラッグを売るギャングはいるが、漫画「闇金ウシジマくん」のような、違法な高利貸しや臓器提供を強制する取り立て屋の話はそうそう聞かない。その理由は、合法的に相当ひどいことができてしまうからではないか、と常々思っている。酒が合法な国で違法に酒を売っても大したビジネスにならないのと一緒だ。
例えば、アメリカの銀行口座には通常「オーバードラフト料」という罰金がある。
アメリカのATMカードは、ビザかマスターの機能が合体しているデビットカードがほとんどで、店舗でクレジットカードのように利用できる。しかし、クレジットカードと違って即座に口座から引き落とされる。その際に口座残高が足りなくなることを「オーバードラフト」という。
そしてオーバードラフトしてしまうと、1回30ドル前後の罰金を取られるのである。ほんの数ドル足りなくても30ドルの罰金。気づかずに何度も買い物すると、30ドル×回数分取られる。
私自身も渡米したばかりの頃、うっかり1日で90ドル取られたことがあった。どう考えてもリアルタイムで残高照会して、足りなかったら決済不可にすればいいだけな気もするが、そんな親切なことはしてくれない。なぜならこのオーバードラフト料は、全米で年間340億ドル(※1)、実に4兆円近い“一大ビジネス”だからである。
これを「搾取」と言わずして、なんと言いましょう。
ほかにもアメリカ金融業のちまちまとしたアコギさは数限りなくある。そうやって、広く薄く、多数の顧客へと、ことあるごとに課金するシステムで、自動的に儲かる産業の座を長年キープしてきたのだ。しかも、規制に守られていることもあって、全米には銀行がまだ5600行もある。