受精卵のゲノム編集、「基礎研究」は容認 指針案を了承

文部科学省生命倫理・安全部会は4日、狙った遺伝子を効率よく改変できる「ゲノム編集」を人の受精卵に施す研究について指針案をまとめた。不妊治療などの基礎研究に限って認め、人や動物の母胎に戻して妊娠させることは禁止する。厚生労働省内閣府の同様の専門家会議の了承を経て、2019年4月にも運用が始まる見通しだ。

中国の研究者がゲノム編集を使って受精卵の段階で遺伝情報を改変した双子が生まれたと主張し、安全性の問題や倫理面から議論を呼んでいる。日本では同様の問題に一定の歯止めがかかることになる。ただ、指針は大学や研究機関の研究者が対象で、違反しても罰則はない。民間クリニックの医師が医療目的で使うことも規制できない課題がある。

指針で新たに認められるのは、不妊治療を目的とした研究。受精卵が発達する仕組みは不明な点が多く、ゲノム編集を使った研究で解明できれば、不妊治療の成功率を高められると期待される。

使用する受精卵は不妊治療で余ったもので、冷凍保存期間を除いて受精後14日以内に限る。遺伝性の難病やがんなどの治療を目的とした研究は含まれない。研究計画については研究機関や大学の内部委員会と国が2段階で審査する。

海外では受精卵にゲノム編集で操作する基礎研究が進んでいる。中国では遺伝性難病の治療を目的に始まり、米国では遺伝性の心臓病を引き起こす遺伝子変異を高い効率で修復する実験に成功した。いずれも母胎に戻すことは禁止している。一方で、望み通りに遺伝子を書き換えることが可能になれば「デザイナーベイビー」などへの応用につながるという意見もある。